Fountains Kanzashi

ファウンテンかんざし

ファウンテンかんざし

(2026年)



「ファウンテンかんざし」は、噴水アーティストとして30年になる杉原有紀の2026年の新作プロダクトです。3Dプリント製のかんざしは、家紋の「ねじやま桜」をモチーフとした「桜」(大:4000円、小3000円)と、2匹の鯉をモチーフに手描きで絵付けしたと「鯉」(3500円)の2種類です。水道水を当てると、桜や鯉のモチーフが回転して、渦巻き状の飛沫が生まれます。らせん状に水滴が発生する面白さと、自然界に存在する幾何学的な回転の美しさが、表面張力の新しい一面に気づかせてくれます。水を当てる高さに応じて、対数らせん(中心から離れるにつれて、渦の間隔が広がる渦巻き)の動的な動きを楽しめるアートプロダクトです。

ファウンテンかんざし 桜の噴水の渦巻き
ファウンテンかんざし パッケージ入り 桜・大
ファウンテンかんざし パッケージ入り 鯉
ファウンテンかんざしの鯉が回転して作り出す水膜
ATELIER OPAにてファウンテンかんざしを並べる杉原有紀

2026年4月にイタリアで先行発表し、東京では8月18日に発売予定の「ファウンテンかんざし」。3Dプリントによる樹脂とナイロンで製作しました。 東京で100年以上受け継がれる和装の「かんざし」をベースに、江戸期から東京の職人たちに受け継がれてきた伝統的な家紋の意匠の「ねじ山桜」と、成長と発展を願う吉祥柄である「鯉」のをモチーフに、回転の美意識を製品化しました。これらに現代の流体力学やと3D設計技術を掛け合わせ、流水を当てると美しい渦巻き状の噴水を生み出す画期的なプロダクトを開発しました。「ファウンテンかんざし」は、江戸の伝統と知恵、そして海外をも驚かせる日本の和文化のデザインと技術を融合したプロダクトです。

オリジナルの「かんざし」の開発
江戸時代中期、日本髪の発展とともに、江戸では金属を細工して美しい髪飾りを作る、錺(かざり)かんざしの技術が発達しました。明治・大正・昭和を経た現在も、かんざしは浴衣や着物、七五三の礼装や、成人式の振袖など、和装の際のまとめ髪を美しく彩る髪飾りとして愛されています。かんざしは、和文化とファッションを象徴するアイテムとして、訪日外国人向けにも観光地や歌舞伎座等で販売されています。
杉原は、東京生まれ、東京育ちのアーティストとして噴水を開発する一方で、世界各地で国際交流に努めてきました。伝統的な着物は訪問した国に敬意を表すファッションとして機能します。さまざまなかんざしを楽しむうちに、着物着付け師範の取得にともない、自分でもかんざしをデザインしたいと思うようになりました。後頭部の丸みに沿うかんざしのカーブを、杉原が学生時代に水膜のインスピレーションを得たスプーンの柄のカーブに寄せたら、持ちやすく扱いやすい形状になるのと考えたのです。ATELIER OPAに研修に来ている欧州のインターンと共に、「外国人の目からみた日本のユニークなデザイン」を研究し、「お土産に持って帰りたい」新しいかんざしの開発に挑みました。

家紋の意匠
日本の「家紋」には数百年の歴史があります。江戸時代には庶民や職人の間で、家ごとの独自のグラフィックデザインとして普及、発展しました。着物の一つ紋や五つ紋として用いられる家紋は、外国人の目にはハイクラスなモチーフとして映ります。ヨーロッパでは貴族の家系や地方自治体をライオンやナイフで表現した紋章が存在しますが、自然の造形を抽象化し、しかもバリエーション豊かな幾何学文様として用いる文化は世界でも類を見ません。和多く存在する家紋の中で、回転やねじれを表現できる「ねじ山桜」と「ねじ梅」をモチーフとした試作を行いました。

ねじ山桜のかんざし
日本を象徴する桜の花の5片の花びらに段差をつけて立体化しました。水が当たると、中心から、らせん状に飛沫が飛び出す設計です。

桜のファウンテンかんざしの物理シミュレーション
リンク先のページでは、桜のファウンテンかんざしの高さを変えた時に、どんぐり状のドームから、平べったい渦巻きへと変化する飛沫の形状と速さを可視化しています。スライダを変えて、形状の変化をお楽しみ下さい。
ファウンテンかんざしの物理シミュレーション(トップビュー)
ファウンテンかんざしの物理シミュレーション(サイドビュー)
シミュレーション

2025年夏の開発中の様子です。パリENSAAMAのJesseがライノセラスで試作をモデリングしました。当初はかんざしの他にピアスを検討し、べっこうを模したイエローアクリルで試作しました。ベネチア建築大学のMattiaと共に浴衣と甚平で洒落込み、日仏伊コラボの協働です。

鯉のかんざし
S字型に組み合わせた2匹の鯉は、「二つ巴」を現代風に表現したものです。古来、鯉は庭園の池にて鑑賞の対象となるだけでなく、「鯉の滝登り」で出世を祈り、5匹の鯉で「五鯉躍(ご利益)」を願う吉祥柄として、掛け軸や着物に描かれてきました。
2匹の鯉をS字型に組み合わせ、「陰陽」や「二つ巴」を表現しました。桜のかんざしに比べ、鯉のかんざしは回転が難しく、開発は困難を極めました。イタリアのクレモナの出展が既に決まっていたため、急ピッチで流水実験と設計の修正を繰り返しました。水が流線形の鯉の形状に沿って落ち、そしてその推進力で回転するよう何度も修正し、同時にかんざしの穴とサポートの微細な構造を見直しました。噴水をデザインする杉原と、即座に3Dプリントを行うモデラーの協力者、そしてAIの協働を経て、ついに完成したのが「鯉のファウンテンかんざし」です。

鯉のファウンテンかんざしの物理シミュレーション
リンク先のページでは、鯉のファウンテンかんざしの高さを変えた時に変化する二つ巴の流水の形状と速さを可視化しています。白い点の集合が水膜を、青い点が飛沫を表し、スライダを動かすと形状が変化します。
二つ巴の大渦メカニズム可視化モデル
鯉のかんざしのシミュレーション

東京では3Dプリントが間に合わなかったため、ミラノのITALYmaker Labにてデータを出力しました。日本びいきのGuidoさんの協力無くして、かんざしの軸と桜(大)と鯉のパーツは完成しませんでした。中3日で完成したプリント製品を手に、日伊コラボの記念写真です。

さあ、ここからが最後の仕上げです。桜のパーツは樹脂製で美しく赤く完成しましたが、鯉のパーツは黒のナイロン製です。Airbnbの宿で、数百個のパーツの上に、白い耐水性スプレーを塗布した後、ミラノ工科大学に留学中の野部太郎さんの助けを得て、アクリル絵の具で一つひとつ手作業で絵付けを施しました。繊細な金彩とポップな赤で鯉の模様と目を描き、美しい工芸品に仕上げました。

「水と遊ぶ」「身につける」2WAYプロダクト
ファウンテンかんざしは和装を彩る回転型の髪飾りとして、また、水道がある場所ではアートな噴水体験が楽しめる、ツーウェイ(2通り)の楽しみ方ができるプロダクトです。 個人が大型の噴水を所有することは難しく、また環境への配慮が求められる現代において、わずか数秒、少量の水道水でダイナミックならせん状の飛沫を描く本製品は、極めて高い節水性を実現した「持ち歩ける噴水パーツ」です。水遊びを楽しんだ日は、お皿洗いやシャワーの際に節水を心がけると、持続可能性が身近になります。

噴水X和文化=日伊交流
2026年4月末、ATELIER OPAはイタリア・クレモナのジャパンショーに出展し「ファウンテンかんざし」を発表しました。鯉の品評会を兼ねた同展では、日本文化をテーマとしたさまざまな商品が並びます。オリジナルで設営したブースにはプールを設置し循環ポンプをセットしました。来場者は初めて見る2種類の渦巻き型の噴水の面白さと、和のファッションをテーマとする商品の背景に魅せられ、驚きや喜びを口にしながら水遊びを体験していました。ミラノ工科大学のUmbeltoがお兄さん役の体験ナビゲーターです。子供たちは噴水の動きに魅せられるとその場から動かず、大人たちは身近な水が作り出す自然現象に喜びと感嘆の声をあげていました。かんざしの高さを変えると、渦巻きのスピードとスケールが変化します。らせん状に飛散する噴水から、銀座星雲や、台風、渦潮といった大きなスケールの神秘的な現象にまで思いを馳せることができる体験を提供しました。

STEAM教育に向けて
Science(サイエンス):「ファウンテンかんざし」は、自然界の対数らせんの形状との類似点を喚起し、ベルヌーイの定理など流体力学への探究心をかきたてます。
Technology(テクノロジー):AIとの開発を実施しました。
Engineering(エンジニアリング):最新の3Dモデリング技術、プリント技術を導入しました。
Art(アート):日本伝統の家紋「ねじ山桜」と、吉祥のシンボルである「鯉」を立体的な段差・曲面として再解釈してデザインしました。
Mathematics:水流のエネルギーによってかんざしのパーツが自律回転し、流速と飛沫の形状に相関性のある動的な対数らせん水流が発生します。
水遊びの楽しさと美しさを、体験者の感想と観察を交え、定量的・定性的に記録していきます。

イタリアの各地の噴水で挑戦!
イタリアには飲料用噴水「ナゾーネ」や「ドリンキングファウンテン」があります。こうした噴水では水道の圧を逃すために水が常に放出されており、人々はそこで水を飲んだり涼を取ったりします。イタリアのトレヴィーゾ、ミラノ、ローマの噴水にて、「ファウンテンかんざし」が回転するかどうかを検証しました。水の量が少ないと回転しないし、水の勢いが良すぎると飛沫がたくさん跳ねてしまいます。街を歩いて、さまざまな噴水で桜や鯉のファウンテンかんざしの回転スピードが変わるのを確認しました。ファウンテンかんざしを身につけてヨーロッパを旅行すれば、イギリスやスペインの噴水でも、水を無駄に使うことなく水遊びを楽しむことができます。

Treviso(トレヴィーゾ)の噴水。2025年度のインターンだったベネチア建築大学のSaraとMattiaが会いに来てくれました。遊ぶさまが得になる二人です。

Roma(ローマ)、パンテオンの前の噴水にて。ローマ第3大学を修了したMatteo。鯉のかんざしで一緒に水遊びしました。

Milano(ミラノ)のスカラ座の前の広場にて、蛇口がドラゴンの形をした有名な噴水で、桜のかんざしを回しました。


イタリアツアーを終えて帰国。2026年6月、東京のATELIER OPAのスタジオにて、ミラノ工科大学のDianaにかんざしを挿す、トリノ工科大学のFrancesca。
漆に金箔を散らしたCGイメージ。和の雰囲気です。将来的には、金属で製作すると耐久性、機能性を満たす軽量で発色の良いかんざしも考えられます。

東京、大手町の鯉の池にて、「ファウンテンかんざし」のプロモーション動画を撮影しました。サッサリ大学のEmilianoをはじめとするインターンの浴衣はジモティで譲り受けたものです。手に持つとつい回転させたくなる軽やかさ。水とファッションの持続可能性、そして和文化を実感できるのが、このアイテムの強みです。

商品紹介


ファウンテンかんざし(桜・小)
4400円(税込・送料込)
桜:直径2.7cm、かんざし:長さ14.4cm、幅6mm

ファウンテンかんざし(桜・大)
4600円(税込・送料込)
桜:直径3.5cm、かんざし:長さ14.4cm、幅6mm

ファウンテンかんざし(鯉)
4600円(税込・送料込)
鯉:長さ7cm、幅2.5mm、かんざし:長さ14.4cm、幅6mm


ATELIER OPAとは

株式会社ATELIER OPAは、「スペースな家具、プロダクトな空間」というデザイン哲学のもと、東京都新宿区を拠点に革新的なプロダクトデザイン、建築・インテリア設計、出版事業を展開するデザイン事務所です。自社における研究とデザインをもとに、国内外の優秀なクリエイター・職人・研究者・企業と協働し、日本独自の技術と文化的価値を現代的に再定義し、国際的に評価されるプロダクトを生み出し続けています。 ダウンロード:アトリエOPAの仕事(PDF)

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